錆取り完了。下地ができたので、では下地塗装に。その前に次の画像を。
半世紀前の自転車( ちなみにハイテンフレーム )、後部、エンド部分。
そのエンド部、塗装がハゲて地肌( 鉄肌 )むき出し。これほどガリガリに塗装がハゲても鉄肌ママなのがわかるでしょうか。
月平均1000km走行、雨天も使用、おまけに保管は屋外な( 軒下 )、要は乗りっぱなしで数年。しかし、おおまかには錆びてない。
( 雨天走行後も、本降りの豪雨でもない限り水気を拭いたりしない… ぞろっぺえなんで )
なぜに!? その答えは、注油! マメな注油を怠らなければ、鉄の自転車なるものは簡単に錆びたりしない。
ただ雨天走行も程度問題、部位によっては流れる、油膜切れが。霧雨-小雨では影響は低いようで、たいていは放置ママ。
その注油、一般的なマシン油。特殊なケミカルは使わないし、いわゆる556もほぼ使わない。
( 水置換に優れたケミカルは、それ以外の目的には使わないし、実際、手入れを怠らなければ556の出番はないと思うのだが? )
乗りっぱなしでも、とにかく注油で、この程度のコンディションは保たれている。
なのだけれど…プロットが。このフレームは塗装下地とパイプ内部を亜鉛塗装してある( zinc )。
鉄が錆びる理由をザックリ説明すると、電気的な反応で錆びる。では、電気的に処理すれば理論的には錆びない。
( たとえば船舶用などのバッテリー式錆止め装置がそれ )
そこで亜鉛をアースさせることにより、簡易的に錆を防止するという考え方が。
たとえばこれは鉄の泥除け・フェンダー裏側。そこそこ雨天も走行、保管は軒下な乗りっぱなし。
グレー部分は亜鉛塗装、キズにヨゴレはあるが錆びてない。ちなみに塗装後5年経過。このように亜鉛でアースさせると数年はなんともなかった。
( すでに譲ってしまった車体で、その後の状態は不明だが、おそらくまだ亜鉛が効いているのではないか? )
では亜鉛塗装。塗装ブースは簡易( もらってきた段ボール )。事前にレデューサーで拭き上げ-脱脂。
( レデューサーはケチケチしてると後悔することに。今回はなしだが、たとえばチューブ内の脱脂にはレデューサーをガン吹きで流すことも )
良い加減にムラなく塗装後、簡単に焼き。これで調子を見る。OKであれば、今度は本塗装に入る。
( サフェイサーに見立てると、再びサンディングにより整えるのが好ましいが、そこは自分用、ぞろっぺえ )
ここまで漕ぎ着ければもう錆びることはないだろう、後はのんびり構えてなペースで。もしも仕上げの色目に迷っても、色が決まるまで放置でもいい。
今回のRight Stuff、段ボールの塗装ブース、換気扇フィルター、レデューサーにウエス、赤外線ストーブ、そして亜鉛塗装は缶スプレー。
亜鉛塗装は市販の缶スプレー、缶スプレーのメリットはフィルターが不要な点。お手軽。
( 含有率の高いもの、95%以上を使用。ちなみにピースコンで吹いたことはない、なにやら詰まりそうで…)
以前はコンプレッサーでガン吹き。コンプレッサーではエア中のオイルもしくは水が問題に、その除去の設備投資にプライベーターの限界を感じた。
( 塗料-塗装そのものは自分で調合して吹く方が簡単、失敗がない。が… なんか面倒になっちゃって…歳のせいでしょうか? )
ところで、端的にはここまででいい( 亜鉛塗装ママで )。でも、それじゃあいくらなんでも色気がない。
しかし下地に凝るほど( 下色を工夫するなど )色に対するこだわりもない。否、好きな色の方向性ある、そこは譲れないが、こだわるなら本当のラッカー塗装で仕上げる。
( すでに国内では本物のラッカー塗料そのものが入手困難。滅多に見掛けないが、ラッカー塗装な車両は素晴らしい。色の深みが凄いんです。ただ、ウレタン系にも歴史があり、そこはメーカーとブランドにもよる。古い車体はなんでもラッカーなわけではない )
サビ・キズの深いのを整えるには、たとえばヴィンテージ系レストアでは板金半田がポピュラーだが、自転車の場合は知らない。そこは見識が浅い、フレームに熱を加えるような手法は避けてる。
なのでたとえば穴が開くほどのケースでは、ビルダーの方に相談( ちなみに自転車レストアで実際に見たケースでは、真鍮ロウを流して整えていた )。
それと亜鉛塗料は鉄肌にアースさせないと意味がない。鉄フレームのみ可能な方法で、たとえばアルミにはNG( アルミがドロドロに溶ける )。
とにかく亜鉛系は強力、タッチUPに例えても、使用の際には気をつけたい( 安易に塗ると既存の塗装面に影響が )。
錆止めの注油には、主に2種類使用、硬いのと柔いの。使用する部位と季節にもよる。たとえば硬いのでは20W60。アウターにはZOIL。
ヘッドにBBなどの隙間をグリスで封印することもあるが、グリスは駆動系用、錆止めにグリスを使うことはない( 酸化する )。
追記。傷が深い場合、この部分であれば素人補修でも問題なかろうなケースでは、半田を流してる。
オールドファッションな手法で、おそらく若い方は知らないと思うので、ついでに紹介。
( ちなみに現在でも、ヴィンテージ系の車両を専門に塗装する工場では半田板金のラッカー仕上げが行われてる。そのようなプレミアムな車体に現代的なパテと塗料はNG )
半田のメリットは鉄との相性が抜群な点。たとえば…
この穴を半田でふさぐ( まず板金用フラックスで処理するが、要はロウ付を想像していただければ )。
このように無難に仕上がる。では、これを叩いて曲げてみよう。すると…
ね、これは半田ならではの芸当。鉄との密着に優れ、なおかつしなやか。いわるパテで( 金属パテも含め )こんなことやると確実にワレる、はがれる。
( あえて端的な例を示した。基本、あくまでも流すので、半田で造形するわけではない )
その1: サビ取り( 自転車フレームの塗装 )
その3: 自転車のタッチアップペイント( 筆塗り編 )
その4: 缶スプレーで自転車塗装( 前編 )
その5: 亜鉛塗料と自転車( 後編 )
その6: 筆塗りで自転車塗装