オイルランプ( 自転車用 )

自転車用ライトの話がつづいた、その勢いで…

oil-lamp

そう、オイルランプ( 灯油ランプ )で自転車用、やはり古い国産品。

自転車用カーバイドもですが、オイルランプも自転車用の国産品は現存数が少ない、とにかくない。

( 対して舶来品は、御国柄か、現存数が多いようです=eBay参照 )

ところで、梶原氏のレポート内の引用箇所に( 孫引き、明治35年=1902年 )、燃料は”石油”と”胡麻油”のブレンドとの記述が。

無論、石油=灯油( ケロシン )だが、胡麻油とは如何に? そこは荏胡麻油( エゴマ油 )と捉えるのが自然かと。

で、当時、常民においてポピュラーなのであろう、この燃料のブレンドにはリアリティが。

つまりたとえば”灯火器”の感覚=行灯の延長。ちなみに灯油は江戸期にも存在、また古くは胡麻油も焚いていたでしょう。

( いずれにせよ植物油だが、江戸期には高級品。ロウソクはさらに高額、安値では魚油でしょうか )

そこで実験。明治時代の灯りの再現、灯油と植物油50/50の常民ブレンドにトライ。

テスト燃料は、灯油( ランタン用 )、菜種油( キャノーラ種でない )、そしてパラフィンオイル( カメヤマ製。普段、ハリケーンランタンにもこれ )。

いずれも高質( 当時のオクタン価も不明であり、とりあえず純度が高いとされているもので揃えた )。

( エゴマ油でなく菜種油を使用は、幕末には菜種油がポピュラーであったという史観が定説的なため )

oil-lamp2

まずスタンダードに灯油で点灯。

oil-lamp3

次、菜種油50%ブレンドな混合油、明治期の常民節約スタイル?

oil-lamp4

そして最後にパラフィンオイル。

oil-lamp5

おまけ、菜種油100%で点灯。当時、旧時代の燃料としてポピュラーな植物油100%な使用もあったのでは?

oil-lamp6

もう一丁! 江戸期の灯火器=江戸時代の灯り。燃料は菜種油100%。

( ランプとの比較用に綿芯で点火、本来は灯芯=さらにマイルド )

雑観。

カーバイド式との比較では、手軽=儀式不要。そこは普通にオイルランプですので。

( また現在でも燃料の入手が容易=安定。対してカーバイド燃料は入手に難が=純度&鮮度に )

実用は? 灯火として、都市部では使える=たとえば23区内は過度な照明で真夜中でも薄明るい。

では郊外の闇夜に暗闇では… OK! 感覚的には、カーバイド並みに見える。

( 却って、真っ暗闇の方が際立つ。ただし、ランプ次第=レンズの質と反射板の造作に負うところが大きいかと )

それとメリットかはともかく、アセチレンの灯りよりも怪しい、幽玄に怪しさ満点。

ガス式、また一般的なケロシン・ランタンとはまた別の、グッとくるものがあるんです。

自転車趣味の方以上に、あの”炎”が好きなランタンのマニアには、かなりおすすめ。

とにかく光り方が怪しい、眺めていても飽きない。端的にはハリケーンランタンなどとは別物なゆらめきが。

このところ、この騒動に嫌気が差し、気分転換にもと、酔狂にも古いランプを使ってみて… やはり良いんですね。

この種の前世紀的なランプは実際に走行してみると、それだけで、使ってるだけで楽しくなるんです。

oil-lamp7

あと、国産というのも嬉しいじゃないですか。

たとえばルーカス( LUCAS )にミラー( MILLER )など舶来品であれば、とっくに手放してるかも。

( このランプ、実は故あって手元に。わけありなんです、それで余計に愛着が )

それで肝心なベストは、もちろん灯油=やはり明るい。

お手軽はパラフィンオイル=リスクと保管方法にも考慮。

( 灯油とパラフィンオイルの差は、今回のテストでは、やや灯油が優れる程度? 劇的な差異はなし )

菜種油も案外には明るいが( 灯油の半分ほどでしょうか )、国産品は高級品=もったいない。

50%ブレンドは… ない。やはり劇的な差異はなし。であれば菜種油100%でいいと感じた。

植物油の特性、まず炎がマイルド=トロ火感覚( 揮発性に劣るのか、たしかに長持ちでは…と )。

そして”つき”はわるい、屋外で強風下では点火に難儀するだろう。この2点が今回の発見。

追記。

燃料に注目は、一度は試してみたかった。その明かりには( 照度的に )燃料以前、ランプの個体差もあるでしょう。

前述な、広角的なレンズの質、また反射板の造作などなど。それと自転車用では装着位置による光軸の度合いも関係か?

このケースでは、わりとレンズの質が高いのか、反射板効果も相まってか、暗いとされる菜種油でも、ポタリング可能なほどに照度は。

菜種油100%での点灯、画像では、江戸時代の灯火器の方が明るく見えるかもだが、実際にはレンズ効果によりランプ式の方が明るい。

( 見切れないが、ランプ正面な室内は全体的に照らされてる。対して灯火器は、それが置かれた周囲な狭い範囲のみ )

留意は、油皿は行灯内に置かれる=照らされた和紙全体としてポワッと明るくなる。

( 行灯が、和紙の明かりは、またいいんですよ )

追記。

自転車用オイルランプは現在も製造販売されてる。それがレプリカで、これが、姿が…。

復刻でございますは、ともかくも、実物を手にしてないのでなんともですが、どうかなぁ…Hmm

でも、そのような復刻が為される点は、さすがレストア文化な御国柄( RBRで70ドル )。

関連のある記事: 自転車用ライトの歴史( 提灯とロウソク )

カーバイドランプ( 自転車用 )

自転車用( モペッドな自転車バイクでなく、普通な車体用の )カーバイド式ランプ=アセチレンランプの普及率が今一つ謎。

調べるほど、特に自転車用は、国内では普遍化に一般的なプロダクトとは思えない。

( 実用車に砲弾ライトに例えても、古くから、な、バイアスが…Hmm 定石的な装備のようで、実際には戦後特需の恩恵により広まったようなもの。その意味では、案外、歴史は浅いのだろう )

燃料のカーバイドそのものは古典的だが( 作業灯などでの需要 )、自転車用はランプ本体の価格に鑑みマスマーケットなプロダクトではないだろう。

( ちなみに国内でのカーバイド製造は明治35年以降 )

参照の梶原レポートによると、大正期末、たとえば小型のルーカスが4円60銭、ミラーの写し( 国産 )が2円50銭、ローソク式は50銭前後、そしてダイナモ式( ボッシュ? )が19円60銭。

当時、大卒の初任給50円前後。今、18万前後=約3600倍。その時代にダイナモ式は約20円、ママに換算では約7万円。

( ただしこの時代の大卒は超エリート、でもプロレタリアに例えても月給では同等と思われる )

ダイナモ式は、よほどのこだわり、また経済的に余裕がなければ無理ではあるまいか?

国産自転車本体の価格では、給与1.5か月分( 70円前後 )で、さほど外してないと思います。

( 普及とは例えても高級品、近年に例えると小型モータサイクルの新車価格な感覚ではないでしょうか )

コーヒー1杯10銭で考えるに( 350円と仮定 )、ローソク式はコーヒー5杯分=2000円前後? 国産カーバイドランプは1万円? 外国製カーバイドランプは2万円相当か?

( ただ、50銭のロウソク式は廉価版。他にもデラックス版かのような、ロウソク式にもバリエーションが )

すると… 夜間走行そのものが稀な常民( 一般家庭 )では、やはり( 梶原史観に倣い )ロウソク式ランプがポピュラーなのでしょう。

( ちなみに最初期、自転車用ライトな概念はママに灯火=棒鼻の提灯、現代的に前照灯的な目的に前方を照らすという概念はない )

カーバイド式自転車用ランプは、やむないケース( 業務上? )もしくはサイクリング・マニアにおいてのみ普及と考えるのが自然だろう。

( 炭鉱などの作業用とはまた別、その大きな差異は、広角的なレンズと走行にまつわる緩衝装置・ブラケットの有無 )

かの地はともかく国内では、自転車用のカーバイド式は広く普及とは言い難く、むしろ( 一般的には )普及には至らなかった?

( 交通量もまばらな時代、主に昼間使用な家庭用で、そのオプション装備に1万は現実的とは思えないんです。使いこなすには儀式も必要だし…)

自転車用カーバイドが普及云々な文言は( そのように語られるなら )、国内では、それは商家の実用車においてか( 狭義 )、自転車バイクの話では?

留意は、当時、オートバイにモーターサイクルな外来語はない。モーターサイクルは”自動自転車”と呼ばれていた。たとえば、かの”ハーレーダビッドソン”の呼称も自動自転車。

( その”自動自転車”が”オートバ”になり、さらに後に”オートバイ”に。ただ”オートバ”また”バタバタ”なども方言かもしれない )

ランプ・ライトでは、戦前のナショナル角型の登場、そして戦中の乾電池の登場( いわゆる”単一”などの規格統一 )により広く普及と解釈したが、いかがでしょうか?

( この広く普及は、常民家庭においてな意味で。それ以前、エキセルのHitは商人用だと思うんです。ただ、木製BODYのロットは月2000個、相当数が販売されたかと )

追記。

戦前-戦後の自転車用ランプに関しては、いくつかの史観にわかれるようだ( 微妙に異なるんです。地域性でしょうか? 総体なデータもなく…)

確かなのは、以前紹介のナショナルのデータ=戦前、電池式角型ランプの出荷数は月3万個、は、広く普及と言い得るでしょう。

それで実用車( 商人用 )では、エキセルおよび角型の歴史に鑑み、すでに戦前には電池式が主流( 移行期? )になりつつあったのでは?

あと戦後直後のGHQフィルムには( 何本か観たのですが )、見切れる自転車にはランプなど灯火装備はなかった点にも留意。

( 戦前の写真などにもに相応に自転車が見切れるのですが、灯火類装備な実例を見た記憶がないんです )

追記。

常民の日々は現実的、物価に照らし合わせるのがわかりやすい。

たとえば「もはや戦後ではない( 経済白書 )」の昭和31年( 50年代半ば )に大卒の初任給1万円前後。

折しもサイクリングブーム到来だが、廉価版のスマートレディ( 元祖ママさん自転車、これは自転車文化センターで現車が見れます )でも1万3千500円。

自転車( 軽快車 )は1万5千円として、ダイナモ式は1/10の価格=1500円前後、角型ランプは電池込みで約400円=1/37の価格。

ちなみにコーヒー1杯50円前後=角型ランプはコーヒー8杯分。

追記。

昭和初頭、RUDGE( 日本ラーヂ=日米富士 )の価格135円前後。大卒の初任給50円前後( 大正期末と大差なし )。

ちなみに自転車ローン( 広告には”月賦”という言葉が使われている )利用で月9円=およそカレーライス100杯。

追記。

舶来、たとえばルーカス( LUCAS )にミラー( MILLER )が有名所で、その写しの国産は半額… が、そこは形勢逆転でしょうか。

今や自転車用の国産品は超希少。かの国にはレストアの伝統が、また相応に普及…と、舶来品は現存数が多いんです( eBay参照 )。

ところが国産カーバイドランプで、しかも自転車用は… ない! とにかくない! 炭鉱に鉄道用と比較すると現存数が圧倒的に少ない。

( 中段の画像、いわゆる”和ミラー型手提付ランプ”で戦前の製品、このタイプが昔は金二圓五十銭 )

追記。

古いランプのコレクターでなく、戦前のカルチャーに固執でもない。

( ナンバーズマッチはともかく、カーバイドランプ=戦前の自転車でないと合わない、年代的におかしい。磯村では戦後の製品もあるが、あれはモペッド用だと思う )

なにが言いたいかと申しますと、アセチレンの灯りには魅了されるが、アンティークな必要はない、コンテンポラリーで良い。

当時の復刻でございます、な、いかにもクラシックなリプロ品もいらない。コンサバではあるが、今、現代的なデザインのカーバイドランプが欲しい。

クラシカルな演出でなく、普通に使いたいんです。

関連のある記事: 自転車用ライトの歴史( 提灯とロウソク )
クール・クール・アセチレン交感テスト

自転車用ライトの歴史( 提灯とロウソク )

自転車のヘッドライト( 灯火・前照灯 )にまつわり、その歴史編( 補足です )。

参考に梶原利夫史観を紹介します( 産業考古学会のレポートを参照 )。

まず黎明期・明治期の自転車ライトには提灯が使われていた=光源はロウソク( 蝋燭 )。

( まだ国内には自転車専用の灯火装備そのものがないと解釈。故に、夜間走行禁止令もあったそうです )

自転車普及に伴い、明治31年には( 1898年 )夜間の灯火点灯が義務化=このころから近代的な自転車用ランプの歴史がスタートしたようだ。

( 義務化=相応のプロダクトが存在したのでしょう、たとえ提灯でも )

当時、オイルにガス式もあったが( 主に輸入品? )、コスト面に難が=広く普及とは言い難いようだ。

( レポートには明治期の新聞広告の引用として、自転車提灯の宣伝に「オイル式は暗く、ガス式=カーバイドは高額… という主旨な文言が )

そして大正期末には、乾電池式が普及と相なるが、最初にふれた自転車用提灯について少し説明。

「細」と呼ばれていたそうで( 俗称 )、でも都内西部での方言( 狭義 )かもしれない。

形状は、主に、いわゆる小田原提灯=弓張提灯で、その派生? 進化形になるのかなぁ? ブリキBODYが登場。

( 縦型・円柱形で、真ん中にロウソクを立てる、前面はガラス窓、上部にスス受け、そして後部にブラケット。これ、現物を古道具屋で見たことが、でも、まさか自転車用とは思いも…)

ロウソク式ランプがポピュラーな理由は、お手軽=その取り扱い、価格的にも。

( でも、たとえば風が強いと点灯しづらいな弱点も。また金属製では、燃焼室が高温になるとロウソクそのものがユルく=尽きるのが早く )

先に明治31年の布令を紹介、後の大正7年( 1918年 )、新たなる自転車使用にまつわる布令=無論、夜間の点灯は義務。

で、梶原史観では、この大正7年を機に、いわゆる”ランプ掛け”が考案されて広く普及云々と。

これは昨今の実用自転車に、当然かのように装備な”ランプ掛け”とほぼ同等( 形状・サイズも )な部品となるようだ。

このレポートで知った・驚いたのだけれど、あの”ランプ掛け”は、そもそも提灯用に開発されたものだそうだ( と解釈した )。

つまりたとえば大正期の写真に記録されている自転車、見切れるランプ掛けは、なんと提灯用=提灯掛けだったのか!?

そこで疑問が2点、まず国内で考案とあるが、輸入品( 自転車用ランタンのブラケット部 )の模倣では?

そして、では明治31年に灯火装備の義務化、20年後の大正7年に専用ブラケット考案と…Hmm

では、その20年間( またその以前 )、いったいどこに( いかにして )取り付けてたのか?

その2点が謎( レポートでは、そこまでは説明されてない )。

この先はナショナルの社史に詳しい( 自転車用の提灯とカーバイドランプなど黎明期の灯火以後、電気式に移行 )、一旦、梶原レポートから離れる。

参照すると、大正12年( 1923年 )、いわゆる”砲弾型ランプ”が発売=エキセルのランプで電池式=ナショナルの前身。

( ちなみにプラケットはステムに装着、前述のランプ掛タイプではない。また、この最初期の砲弾型、なんとBODYは木製。木管屋に外注とのこと )

留意は、すでに電池式ランプも存在、が、以前にもふれたが、不安定要素=主に電池寿命に電球光量と。

そこに登場なこの砲弾型、従来の電池式との比較では約10倍=30-40時間点灯と経済的=そこが普及の理由。

電球では、梶原レポートには、従来は400-500mAであったが、いわゆる”5倍球”とされる120-130mA豆電球の登場に付言している。

そして昭和2年( 1927年 )、手提げタイプな角型ランプが発売に。この角型な手提げランプから”ナショナル”の歴史がスタート。

( 最初、「ナショナル」とはランプの品名だったのですね。ちなみに”インターナショナル”のナショナル=常民の )

lantern-bicycle

画像、右端に見切れるのが角型な手提げランプ。ハイパー用では初期かと思います。ハイパーの前身の紙巻き、またA型という箱型も、2nd初期普及型はA型用かと。

( ベークBODYで箱型電池対応&JISなしのタイプを稀に見掛けるが、あれが最初期だと思う )

最初期の角型は「月3万個を出荷」と社史に、エキセルのヒットを上回る、爆発的な売れ行きだったのでしょう。

( 昭和2年の角型から、常民家庭においては、電池式が広く普及=ポピュラー化と解釈した )

さて、ダイナモ式ランプはと、そこで梶原史観に戻る。

大正期には存在、が、おそらく当初は輸入品? 大正11年( 1922年 )ころには国産品も登場。

でもポピュラーとは言い難い、特殊なプロダクトであったようです( 高額なためかと )。

やがて11年後の昭和8年( 1933年 )、ナショナル製ダイナモ式ランプが発売に。

しかし昭和14年( 1939年 )にWWII勃発( 戦前な1933年-1939年な6年間の状況は詳しくは不明だが、広く普及には至らなかったようだ )。

昭和20年( 1945年 )に終戦。以降は、ざっくり言って、復興の流れとともにダイナモ式ランプも普及。

そこは生産数に例えると一目瞭然、国内総数、昭和22年に20万個、昭和23年に125万個、昭和24年に150万個、以下増加の一途( 数は約・おおまかに )。

そのようにダイナモ式の普及は戦後のようです。

ではそこで山田鉑雄史観を紹介( 山田氏はパイオニア期の一人 )。

昭和10年( 1935年 )ころ、前述のナショナル製が発売されたころ。

山田史観では( 当時の回想 )、意訳です「ダイナモ式は富裕層に道楽者が…云々。

と、やはりまだ特殊かと。それで当時、山田鉑雄氏はロウソク式を常用とのこと。

昭和10年でもロウソク式がポピュラーに、興味深いのは、布令に則すため「直に手に持って走ったことも云々。

( ロウソクの根本を新聞紙などで包み、手で掴み、炎が消えないように走行。しかも、そんな所作の自転車乗りを”よく見かけた”とのこと… まさに隔世の感が…)

補足。

最初期の自転車提灯は、興味があれば”Cycles Clement Poster”で検索してみて下さい。

ハンドルバーに提灯を吊るしたスタッガードフレームが描かれたヴィンテージのポスター画像がHitするはず。

電気式ではナショナル製に例えた、梶原史観でもナショナルに着目なため( また社史紹介の公式サイトがわかりやすい )。

無論、他にもメーカー・ブランドは存在( ブリキ提灯同様に、古道具屋などで各種マイナーブランドの製品を見掛けます )。

補足。

昔の乾電池は箱型。60年代にも、まだ販売されており、けっこう大きい、嵩張るんです。

紹介のエキセルのランプまた最初期の角型も、その箱型がデフォ。当初は画期的なのでしょうが、今となっては、現行品よりも劣るでしょう。

社史に頼ると、昭和29年( 1954年 )にハイパーが発売=現在のスタイルな乾電池。

つまり日常的に見掛けるポピュラーな型式の乾電池は、案外に、歴史が浅い戦後のプロダクト。70年も経ってない。

( 60年代の記憶があるため、50年代半ばとは、そう古い話だとは思えないのです )

総括。

最初期は弓張提灯、それが円柱形なブリキ製に、光源は主にロウソク式。やがて電池式な砲弾型ランプ登場な、明治-大正期。

( そもそも国産自転車そのものが西欧の模倣、その装備品も輸入品の模倣からスタートで、独自な進化を遂げたのであろう )

大正-昭和にかけて電池と電球も進化( ロウソク式は衰退 )。

戦前は、電池式のランプが主流に。そして戦後にはダイナモ式のライトが主流に。

これ、化石燃料系なカーバイド( アセチレン )から電気式に移行なタイミングが知りたくて調べて見たのです。

古くはカーバイド式が主流と思い込んでた、つまりローソク→オイルかガス→電池かダイナモな、流れかと( 普遍的には )。

ところが( 梶原史観に倣えば )ロウソク→電池→ダイナモに移行。

( オイルにガス式の機器は高嶺の花? そのような前世紀的なランプが普及は、ドメスティックな実用車では、総体では、20世紀初頭の一瞬だったのでは? )

あと、なんともな、謎は、古い写真もしくはフィルムで、提灯装備な自転車を見た記憶がなく。

それほどにポピュラーであれば、多少なりとも記録されてるはず。今後、特にその点に注目してみたいが、もしかして自転車用提灯って日本固有?

( エキセルに例えても、戦前のナショナルを支えたとされる程のヒット商品にもかかわらず、なぜに現存数が少ない? 見たことないんです )

参照。「日本の自転車灯火( 提灯から発電ランプまで )」&ナショナル社史。

レポートには各種ランプの画像が添付されており、珍しいものでは、クリップ式ローソクランプが( このクリップとは、ランプ掛けに装置なブラケットだろうか? 今一つ不鮮明 )。

また大正期のダイナモ式も=これが、大業に大型に見える。戦前=昭和期ころから、より現在的なタイプ・サイズに近くなったようだ。

追記。

髙橋誠之助著「神様の女房」によると、エキセルは、大正-戦前まで、ナショナルの主力商品とのこと。

( それとエキセルは官庁納入に御用品のようで、納入数は不明ですが、それのみでもまとまった数が、では? )

セールスコピーは「10倍以上の寿命・30-40時間は連続点灯可能」で、それまでの電池式は3-4時間しか持たなかった。

( エキセル登場以前、従来・他社の電池式ランプはプア=使えないネガティブイメージなプロダクト )

ランニングコストでは、ロウソクは1時間用が1本2銭、エキセル用電池はトータルではその半額。イニシャルコストを考慮しても、総体では、エキセル優位に。

つまりカーバイド式など前世紀的なランプが廃れたのは、小型電池の普及云々よりも、エキセル=ナショナルの登場によりではあるまいか。

関連のある記事: 手提げランプとダイナモライト
カーバイドランプ( 自転車用 )
オイルランプ( 自転車用 )

逆JISのホイール組み( 反JIS )

自転車のホイール組みとスポークの強度なんたら。

これは自振協技術研究所( 自転車産業振興協会 )井上重則氏のレポートに則す=それがエビデンス。

( 自転車のホイール組みに関して、具体的な数値に基づき説かれたものを、国内では、他に知らない )

自転車のスポーク強度は、ハブフランジの内側と外側とに振り分けな通し方では、負荷に強いのは外側のスポークに。

( ちなみに昨今、モーターサイクルでは、すべてフランジ内側から通すタイプのハブが主流のようだ、否、最新装備はさっぱり…)

なぜ外側かは、内側はスポーク首角が大きく=組み上げた状態で、すでに負荷が掛かってる、ストレスが。

( 内側スポーク首角10度以上の増加、対して外側スポーク首角の増加は3-5度とされている。ただし、これはホイール総体でも捉える必要が )

そこに駆動に制動で、よりストレスが加われば、すでに負荷な内側は逝く、外側よりも先に。

( スポーク首角の耐性そのものは、端的には、108度ほどでクラックが発生し、112度前後で破断するそうだ )

で、ハブブレーキのホイール組みは、反コグ側に制動装置な一般的なタイプでは、通常使用にはJIS組みだ。

( ブレーキ側は前方に外側スポークが延びる=制動トルクに対応。コグ側は後方に外側スポークが延びる=走行トルクに対応 )

パスハンターなど古典的に軽量なサイクリング車は、たいていはリムブレーキ。前回、講釈たれたようにホイール外周側で制動。

ハブブレーキに比べればマイルドな制動であり( と、思うので )、イタリアン=左右外側スポークとも後方に=走行トルクに特化。

( 前進時、クランクを踏む=ハブ回転=左右スポークのトルクは、外側スポークがリムに対して進行方向に即す・有効的 )

そこで問題。では、制動はセンター位置、クラッチ( 制動装置 )はコグ側なコースターブレーキでは?

( やはり前回述べたように、特にコースター式は制動時のリコイル=衝撃が。実際、往々にロック=後輪が流れる )

たとえばトラック想定な、コグ側にドライブ&制動な固定ではJISかイタリアンで組むのが一般的ではないだろうか。

コグ側にドライブ&制動な点は、コースターブレーキも同様だが、その機構と用途も異なる。

( クラッチ側=フリー的機構を兼ねる、そこには遊びも=タイムラグが。そのような点が絶えずシンクロな固定とは違う )

コースター式で、反コグ側はフリー的な場合、クラッチなコグ側には前転・後転ともに負荷が。

( 前進は前述ママ。制動では、クランクを逆に踏む=ハブ逆回転=スポークのトルクもリムに対して進行方向とは逆に )

単純な話、駆動に特化か、もしくは制動に特化か、所作に鑑み( 総体的に )、そのいずれを選ぶかだろう( と、思う )。

冒頭に戻る。ハブフランジ外側のスポークは負荷に耐える( 前述のように余裕が )。

フリー的な反コグ側を走行トルクに対応な仮定では、外側スポークは後方に延びる組み方。

車重に鑑み( 鉄の塊かのような自転車では )制動時のリコイルに対応な仮定では、コグ側の外側スポークは前方に延びる組み方。

( 私のケース、フル積載で25kg前後+体重。運搬車ではさらに重いのだろう。ただ、トラックな固定よりも巡航速度が低い )

すると、すなわちそれは、そう、逆JISか?

JISが無難な気もするが…どうかなぁ、リコイルを考えるとイタリアンはないなぁ…Hmm

純粋なスポーツ自転車とは異なり、やはり車重+積載がネックで…と、うだうだ言っても仕方ない。

jis-reversed

そこで画像は、月3000km走行号。後輪は、実は逆JIS( 反JIS )組み。

逆JISに約3万キロは走行、特に問題なし。それほどに実走行で問題がないのであれば、クソ重い車体にコースターでは逆JISで良いのではあるまいか。

と、それが現時点での結論。もちろん素人レベルの話( 一応、井上論は踏まえてるつもり )。あまり真に受けないように。

が、先に少しふれた、ホイール総体で捉える必要が。

つづきます…

追記。

駆動に制動の”トルク”という言葉を用いるからには、具体的な”値”で説明されるべきなのでしょう。

( スポークテンションの話ではない。駆動に制動時のハブとスポーク、そしてリムに掛かるトルクの数値、変形値などのデータ )

でないと、抽象的。否、経験値に基づく…は、わかるのだけれど、この御時世に、それのみで語られるのはいかがなものか?

理屈はわかる、が、その工学的なエビデンスが欠けてしまうと、まるでオカルト的ではないですか。

でもね、仰仰しい話でなく、これも一興、な遊び。メンテ好きな方は自分で組まないともったいない。

こんな面白いことを他所様に委ねるなんて!=自転車趣味とは言い難い私でさえもそう感じる。

ちなみに( 古い話 )、メカに関する基本的な事柄は前田守一氏の連載に学ばさせていただいた。

あと、あんちょこでは大昔のニューサイ誌が秀逸で、今だに参考にしてます。

追記。

よりハードな想定なモーターサイクルでは、定石はJIS組。でも駆動は左側がポピュラーと=逆JISに( 実質JIS )。

機会があれば、様々なスポークホイールのモーターサイクルを観察してみると面白いです。稀に、ドラム式でもイタリアンとか。

( カスタム車両なのだろうが、近所で、たまに見掛けるカブの前輪がそれで )

専門的に深い関心があるわけではないのですが、他所様の自転車で、最も気になるのが、このスポーク組みなんです。

あと現在、自転車用フロントディスクには逆イタリアン( 反イタリアン )推奨じゃないですか。

それ制動に特化なのだろうが、Wディスクはわかるとして、片側ディスクのホイールでは? そこも謎( まあでもそれは門外漢なので )。

これが、やはりモーターサイクルな例えでは、片側ディスクの場合、逆イタリアンとは限らないんです。

コースターブレーキのエトセトラ

自転車の後輪とハブブレーキにまつわる話。

ハブブレーキも多種、おおまかには、ドラム式とディスク式に分類可能。

ドラム式では、バンドで締め上げて制動なバンド式、そしてシューによる内拡式( リーディング式の一種 )。あと最近のローラー式も内拡式に。

そのドラム式とディスク式ともに、一般的には、ブレーキはコグの反対側に( 左側が制動装置 )。

ところが、コグ側に制動装置( クラッチ )があり、制動そのものは内拡式、さらにシューはハブ内に=ハブシェルがローターを兼ねる。

それが、そう、いわゆるコースターブレーキ。やはり多種=型式による違い。たとえばクラッチの仕組みにシューの位置など。

( 作動そのものは螺旋状のインボリュートスプライン形状に、クラッチはコグと一体形か、別機構的にセパレートが。シューの位置は、センターまたは反コグ側など )

そのコースターブレーキ、自転車用ブレーキでは最も強力。

国内での歴史も古く、すでに明治期には輸入販売されていた。

ところで、一般論としては、ディスクブレーキ<ドラムブレーキに。が、制動に優れるハードなドラム式は、それがデメリットにも。

ブレーキは車体の操作装置でも、止まればいいというものじゃない。そこ、操作性に優れるのは( 放熱性と耐候性など総体で )マイルドなディスク式に。

簡単には、リム式にディスク式は外側から抑えて制動。対して内拡式は、内側から抑えて制動。コースター式では、いわば中心軸をダイレクトに制動。

よりハードな制動は、端的には、回転軸そのものをロックさせるかのようなブレーキに。故に後輪は、往々にスキッド的に滑る。

( それでたとえば、前輪用ローラー式にはパワーモジュレーターが必要に )

ただ、クラッチを介すコースター式は、クラッチがある故に調整可能=マイルドな制動も( 逆、即、ロックなガツンなブレーキにも。でもまあ裏技です )。

他にも特徴が、それはローターとシューともに鉄な点。つまりコースターブレーキにはライニングがない。

そこで、問題が…

coasterbrake

画像、ハブ焼き、こんがりキツネ色に焼けました。

( ハブシェル真ん中の焼けが顕著=シューが当たる部分=そこで制動 )

信じられないかもだが、この数分ほど前までは、ピカピカにメッキ。

峻峰な峠から急降下で、ここまで焼ける。グリスの耐性に推定するに、200度近くに達しているだろう。

( このように一目瞭然だが、通常使用で、自転車の部品が100度以上にと言っても、まあ誰も信じない )

ローターとシューともに鉄で密封な内拡式=熱がこもる、放熱性に劣るなデメリットが。

( それでやはりローターとシューともに鉄製なローラー式には放熱板が。あと、現物を見てはいないが放熱板のあるコースター式もあるそうだ、MODかなぁ? )

この種のブレーキハブが国内( 山国 )で普及しない理由がこれ。激坂に弱い。

( 逆もある。激坂の登りでコグのドライバーが負荷に負けることも=半クラ的になる )

こうなるとOHが必要( ポンプアウトなんで )、これがいわゆる”リパックバイク”の由来。

( 画像、この時、実際にはハブが白煙を吐き、シューシューと音が。また左側にポンプアウトしているが、コグ側にポンプアウトな経験はない )

ちなみにフェードは? 経験ではない( 実は幾度か、このように急降下でハブを焼いている )。

つづきます…

追記。

コースターブレーキのメリットは、まずメンテナンスフリー( 経験では、たいていは5千キロはいける )、そして全天候型=リーディング式ドラムよりも密閉に優れる。

( なぜに優れるかというと、内部にもグリスが使える=それで完全的に防げる。そこも特性、シュー面にまでグリスが使えるブレーキはコースター式とローラー式のみ )

またアウターケーブルなど不要=ホイールサイズとブレーキアームのリーチ問題を無視できる。

デメリットは、まずは前述のように激坂に弱い( 山岳地帯には不向き )、雪路に凍結路に弱い( 即、後輪が流れる )、そして多段は無理=シングルonly。

( 多段に関しては、内装式は別として、機構的にテンショナーが使えない。ただ、大昔、コースター式連動のテンショナーもあった )

あと、フレーム( チェーンステー )にストレスが。それで古い運搬車にはアーム側フレームが強化されたものも。

なによりも現在販売な製品はプア、ろくなものがない( それでもスターメーにスラム製は、かなりまともかと…)。

関連のある記事: 逆JISのホイール組み( 反JIS )